鉄塊



 お前の声ばかり聞こえる。頭の中に響いてる。
 お前が言ってもないことを、言われている。
 俺の頭の中で、何か良くないことが起こっている。
 ほとんど、声なんて、聞いたこともないのに。
 だって、お前の口数は少ない。
 俺に対して。
 俺ばかり、いつも喋っている。喋りたいわけでもないことを。
 話がなけりゃ、一緒にいる理由もないからだ。
 少しは近づいている気はするんだ。
 あいつだってそう言っている、俺よりお前によっぽど近いあいつ、
 あいつといる方が、気楽で和めるのに。
 お前の声ばかり、俺の頭の中に響いてる。
 気が狂っちまってるみたいだ。幻聴みたいな。
 お前が言ってもないこと、言われてる。
 お前が一生言いそうにないこと、言わせてる。
 何が本当か、分からなくなりそうだ。
 でも、俺は、分かってる。
 もう、とっくにおかしくなっちまってるんだ。
 須藤、
 いつか、お前が俺を、好きだなんて言うことが、あるんだろうか?
(終)


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