予備



 どこまで入り込もうとしてるんだ?
 人の領分に、足跡を残したがっている。
 そうなのか?
 そんなこと、どうでもいい。
 スペースはない。誰にやれる場所もない。
 脳が痺れる感覚は分かるだろうか。
 考えても考えても納得のいかない出来事がある。
 苛立ちとは違う。怒りでもない。
 ただ、柔らかい脳味噌が痺れていく。そんな感覚だ。
 欲望と理想の溝を埋め、混在させる。
 そこまで入り込みたいのか?
 入り込ませたいのか、追い払いたいのか。
 追われる立場は嫌いじゃない。
 しかし、これは、
 何だ? どこまでが、俺の範囲だ?
 少しずつ染み入ってきているのか。
 理解はない。光に照らされもしない。
 誰かに分けてやりたいなんて、思ったこともない、
 分けてやってもいいとすら。
 俺は俺だ、俺の思った通りにするしかない。
 入ってこようとしないでくれ、
 そこは誰にもやれないんだ。
 他のところにしてくれないか。せめて。
 そうしたら、まだ、何とかなるかもしれないんだ。
 何とか、
 何とか、
 しかし、それは俺に、どうしろってことだ?
(終)


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