切り替え
スイッチが入る。カチッと。んで、あとはそういう俺が勝手にやることだ。俺が中里と会うとき、会ったとき。勝手な俺になる。走り屋とか忘れてやがる、そんな。別れたらそこで終わり。カチッと戻る。ホント、ハッキリ切り替わる。怖いくらい。
普段の俺はあいつのことなんて考えない。んな速い奴じゃねえし。アニキとか藤原とかと比べると、まあ比べるまでもない。だから俺とも。当たり前。
けど、急に俺は、あいつに会いたくなることがある。スイッチが入る。きっかけは分からない。大体は暇なとき。忙しいときに、わざわざあいつに会いたいとも思わない。でも苦しいときは、カチッといくこともある。そしたらもう、どうしようもねえ。
何でよりにもよってあいつなのかも分からない。GT−Rなんて乗ってやがんのに。っつーか男だし。勃つ相手じゃない。普通。でも俺はあいつが好きらしい。それもよく分からない。
女の尻をヤるのもまあ悪くはないと思ってたけど、男の尻をヤることは考えたこともなかった。でも入れちまえば、女の尻も男の尻も、大した違いもない。中は。力強いとか、きついとか、そんくらい。
外は違う。違いすぎる。あいつは男。俺と同じで、つくものついてて、俺より汚い体してる。でも、あいつに会いたくて、会ってるとき俺は、あいつのことをカワイイと思ってる。おそろしいことに。
中里は、カワイイ顔はしていない。断言できる。何かごついし眉毛太いしデカい目はちょっとキモイし鼻も唇も厚い、繊細さに欠けるっつーか、ヒゲも濃いめだし、毛も濃い。っていうか全体が濃い。濃い以外の何でもない。カワイさなんてカケラもない。
そんな顔してる奴と、会いたくて会ってる俺は、それでもカワイイと思ってる。まあびっくりだ。そして俺はそんな奴のアレとかソレとか舐めて、コーフンしたりする。マジおそろしい。チンコとかタマとか咥えてやって、それで感じてやがる中里の声とか顔とかで、またコーフンする。入れたくなる。尻の中。で、入れてるし、イクまでガンガンやってんだ。頭がおかしい。ってよりも悪い。どうなってんだって感じ。
それだから、もしも、フツーにあいつと会ったらどうなんのかって、すっげえたまに考える。不意打ち的に、道でバッタリとか、俺の頭が悪くねえとき、出くわしたとき。俺はフダン、あいつに会いたいとか特別思わない、会いたくないとかじゃない、どうでもいい。あいつのこと考えてる余裕もない。だから、たぶん、挨拶して終わりだろう、とだけ思う。前と同じ。バトル絡みでしか会ってなかったときと。
ヤッてるときは、全然そういうこともない。あいつと会いたくて、ヤりたくて、そうしてるときの俺は。どうでもよくなんかない。あいつが全部俺のモンで、俺が全部あいつのモンって感じ。あれがずっとだったら、俺、かなり道踏み外してる。人としての、ってんじゃなくて、走り屋としての。そういうことも、忘れちまうから。短い間で終わるのはありがたい。あいつと別れりゃ何もなくなるのもありがたい。先に進める。
今よりもっと余裕出たら、でも、入りっぱなしでもいいんじゃねえかと思う。スイッチ。入れ方もよく分からないけど、たぶん、あいつとずっと一緒にいれば、勝手に入ってくれるだろう。ただ、あいつは、それは嫌がるかもしれない。今でも嫌がってる。らしい。俺と一緒にいること。やっぱりよく分からない。いつかは分かりたいと思う。あのときの俺は、勝手にやってる。頭が悪い。でも好きだ。俺らしい気がする。そういう俺が好きなあいつのこと、いつかは、ちゃんとしたい。そのとき、手遅れじゃなけりゃ、いいんだけど、それはあのときの俺次第。あいつをつないでられるかは。今の俺には分からない。いつかの話だ。
(終)
2007/02/20
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