順番
世の中には順番ってもんがある。あなたは105番であなたは22番です、みたいに勝手に決められるもんだとか、一着とかビリケツだとか、そうやって決められるから分かりやすくなってるんだろう。順番だ。俺は勝手に決められたもんはあんまり好きじゃない。誰に何を決められたくもない、俺のことは俺が決めてりゃいい。けどやっぱり仕方ない、ってもんはある。俺もそれは分かり始めてる。俺がアニキの後に生まれたことはそういう順番だったわけだ。曲げられない順番。あんなパーフェクトを地でいってるようなアニキが先に世に出て色々やってくれてりゃあ、後に生まれた俺もそんな風になっていくだろうって期待しても、まあ仕方ない。アニキが言うには俺はハンシャカイテキナセイカクガケイセイサレルニテキセツナソヨウを元々持っていたらしいから、期待する方が間違っていたらしいけど、そんなことは俺は知らない。残っているのは結果だ、俺が親父もおふくろも裏切ってみんなに迷惑をかけた、その結果。でもそれはそういう順番だったからだ。変えられない順番。俺があいつと会った順番、あいつと走った順番。その時はそれでいいと思ってる。俺は普段先のことをどうこう考えて動く方じゃない。バトルなら考えるのも楽しいけど、どうでもいい奴らのことまで考えて動くのなんて面倒だ。だから俺は深くは考えない。考えないで動いて、たまに後から意味に気付く。何でもないような時に、例えば部屋の切れかかってチラチラしてる蛍光灯をベッドに寝転がって見てる時、突然ひらめく。順番だ。順番が変わった時のことだ。それはもう終わってるから変えられない、でもこれからのことは、これからの俺のことは、俺がどうにでもできる。気付いて、そしてすぐ、俺は動く。動かないで考えていると、自分の体が腐って溶けていきそうな気がしてくるからだ。だから俺はすぐ動く。先のことは考えない。俺のことだけ考える。これは俺のことなんだ。おふくろのことでも親父のことでもアニキのことでもない、俺のことだ。そしてあいつのことだ。そういう順番が丁度いい。
(終)
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