恋をしている
恋をしている気持ちは分かる。思うだけで胸の奥が熱くなり、考えるだけで興奮が全身を駆け巡る。それだけあれば生きていられる、それさえあれば、やっていける、そんな確信が血肉に満ち溢れ、常に先へと進みたくなる。自分にとってまず、走りがそういう対象だ。
見込みがあればあるほどに、それは辛いものとなる。耐えていればいずれは何とかなるかもしれない、自分のものになるかもしれない、手に入れられるかもしれない。だから我慢をすればいい。だがその我慢が辛いのだ。見込みがあればあるほどに、深く触れ合える可能性が目の前にあればあるほどに、欲望を抑え込むことは苦痛となる。永遠にも似た長い長い苦痛となる。
だから見込みはないものと、しなければならなかった。見込みがないというのは残酷だ。しかし少しでも好意を抱いている相手に、見込みのあるように振る舞って、耐えがたい苦痛を与えるくらいなら、可能性を遮断する方が、よほど優しいと言えるだろう。仮にそんなものが望まれてはいなかったとしても、望んではいなかったとしても、それに縋らずにはいられない状況というのは、確かに存在するのだ。例えば今の、自分のように。
(終)
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