そんなひと時
盛った真似をして押し倒せば渋々という様相で承諾するくせに、煽れば煽った分だけ反応を示す肉体を見るにつけ、抱くべきは主導権を握る優越感か己を抑制し切れない敗北感か、慎吾はまれに考えるが、眼前に広がる欲に濡れた肌が剥き出された獲物の痴態は、その自尊心という牙城をいかにして陥落させるかのみを思考に乗せることを許し、目的に基づいた反復的運動へと導いて、返される刺激も更なる飢餓を呼び起こす餌にしかならず、与えられる官能はないにも等しい理性の尊厳を壊滅させ、止めることすら淫靡な誘惑となる袋小路に突き進み、現実の醜さと寄り添いながら、ただ堕ちていくのであった。
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