考える



 慎吾は考えていた。
 額が熱く、脳は冷たい。
 腰を揺すりながら、この後はどうしようかと考えている。
 中里はいい加減辛そうだった。
 顔は見えない。
 尻を抱えている。
 声で分かる。分かるようになった。やりすぎた。最早全てを把握できる思いだ。慢心かもしれないが、それを煽ることをこの男がするからいけない。
 あと何分もつだろうか。考える。この後はどうするか。いつでも脳味噌は冷えている。こめかみは熱い。頭皮から染み出した汗が、顎先に滑り落ちてきて、滴る。筋肉が常時収縮し、弛緩し、快感をむさぼる。
 中里は苦しそうだ。下にしている背がたわみ、尻が細かく動く。呼吸は荒い。漏れる声には低めようとしている努力が感じられた。実際は人の指先を燃やすほど高い。極みのほどが分かる。分かるようになっている。どうしようかと考える。考えているが、余裕はない。本気で考えようとはしていない。ただ、何かを頭に置いておかないと、今以上に傷つけかねない。あと何分もつだろうか。あと何秒もつだろうか。考える。本気では考えていない。この後はどうするか。
 中里は辛そうだ。
 慎吾は考えていた。
 同じ動きを続ける。
 単調で、つまらない動きだ。
 慎吾は考えた。
 何か言われてから考えよう、と考えた。
(終)

2007/09/20
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