方眼紙の隙間
男とヤるのが頭イかれてるってことにはならねえだろうよ。どうしてそれをイコールで結びたがるのか、毅の奴の貞操観念は理解ができねえ。世の中には童貞だろうが処女だろうがイかれてる奴がいるんだから、そんなの関係あるかってな。セックス依存症までいってなけりゃ、普通で済ませとけっての。
「お前は慎重なんだか大胆なんだか分からねえな」
いっつも俺が尽くしてやらなきゃその気にならねえのに、盛った時には自分からフェラしてくる奴に言われたくねえ。何なんだよその気分屋具合は。入れてもねえのに出しちまうだろ。俺フェラされんの好きじゃなかったんだけどな。手コキの方が喋ってられるし。黙ってるとどうでもいいこと考えちまって、結局萎えちまうから。まあそんな俺のあんま多くねえ女経験も、こいつのおかげで遠い昔のことになっちまったんだが。
「人のせいに、するんじゃ、ねえよ」
いや、どう考えてもお前のせいだし。お前の責任だし。まあ責任取れとは言わねえけどよ。始めたのは俺だからな。でもお前の哲学的にはアレだろ、好きな奴以外には反応しねえんだろ。それでいったら好きな奴とヤッてるだけなんだから、やっぱ普通でいいんじゃねえの?
「……へりくつを……」
そりゃ他の奴らにバレたらどこが普通かって話だけどな。お前がこんなにケツの穴だけで感じることとか、そんなお前見てギンギンになる俺のこととか。山にはいられねえな。群馬にもいられねえかも。だからバラすわけねえし、俺とお前の間だけなら普通でいいだろ。っつーかそんなに普通じゃねえことにしてえなら、ヤらねえぞ。だって俺普通だし。普通にお前とヤりてえからな。けどこんだけ普通普通言ってると、そろそろ普通って言葉の意味が薄まってくるぜ。何だよフツウって。まあ普通は普通か。平凡とかそういう系統の。
「慎吾……」
だからその気分屋具合は何なのかってな。首に腕回してくるまでならあるが、キスはねえよ。舌まで入れてきやがって、もう入れちまうしかねえだろうが。慎重なんだか大胆なんだか。ああ、待ち遠しかったのか。そんなに俺のことが好きなのか。うわ。改めて思うと、やべえなこれ。止まるもんも止まらねえ。若いよな、俺。二十歳越えてもう性欲終わり気味かと思ってたんだけど。五回戦くらい十分いける。今の毅ならできるだろ。それならまあ、変態ってことにしてやってもいいかもな。俺の頭なんて、元々イかれちまってるんだ。
(終)
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