目
死ぬほど分かりやすい単純馬鹿のお前が、ここから離れる気なんて一ミリもねえってことは全世界に筒抜けだろう。疑う余地もないってヤツ。なのに俺は、全身の皮、曲刀で一つ残らず剥ぎ取られたみてえに、やばいくらい寒くて、わけの分からねえ感じになっている。お前の考えが読めないからだ。どうせ金のやり繰りどうするかとか、明日何食うかとか、くだらねえこと熱心に考えてやがるんだ、いつものようにそう思っても、いつものように俺は信じられない。しょっちゅう油断して間抜けになるお前の顔が、そうやってRの前で、それこそ疑う余地もないって感じに毅然として、思考回路だだ漏れのお前の無駄にでかい目が、そいつしか中に入れないくらいに狭まっていると、俺はお前が何を考えてるのか、全然分からなくなっちまう。心臓が変な動き方をして、頭の血管がねじくれて、目の端が白く濁ってくる。違うだろ、そうじゃねえだろ。こっちを見ろよ、俺を見ろ。俺を認めろ、ここに俺がいるってことを。そうすりゃ俺は、毅、お前のことをもっと理解してやれて、お前と一緒にいてやれるんだ。
(終)
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