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「そういや最近真壁の奴見ねえな」
「当たり前だろ、あいつ免停中だぜ」
「免停?」
「免停。免許停止処分中」
「いつからだ」
「十月の、後半だったかな。覆面にやられて点数オーバー、ご臨終。知らなかったのか」
「いや、姿見ねえとは思ってたんだが……」
「まあ俺もそれからほとんど会ってねえけどな。あいつ会うと車運転させろってうるせえんだよ、誰が免停野郎に俺の大事なEG−6のハンドル握らせるかってんだ。メアド変更したと思ったら結婚記念日なんかにしてやがって、離婚したらまた変えんのかっつーの」
「ならお前はどうなんだ?」
「あ? 何が」
「車乗り換えたら、アドレス変えるのか」
「……揚げ足取ってんじゃねえよてめえは」
「自分のこと棚に上げといて、何言ってやがる」
「っつーかお前、俺のメアド知ってたのか」
「いや、正美が話しててな。お前のアドレスがどうのこうのと」
「あの野郎、何しれっと俺の個人情報漏らしてやがる」
「お前もあいつの個人情報漏らしまくってんだから、お互い様じゃねえのか」
「お前の顔で正論っぽいこと言われると殴りたくなるから口出すな、毅」
「顔かよ」
「顔だ。お前の顔ほど憎たらしいもんはないぜ」
「お前、自分の顔を鏡で見たことあるか?」
「お前こそあるか?」
「ったく、ああ言えばこう言う奴だな」
「お互い様じゃねえのか」
「……真壁の奴、いつ免停明けるんだ」
「反論できねえからって話変えてんじゃねえっての」
「てめえ」
「まあ今月中じゃねえの、志田の奴とか復帰祝いしてやるって張り切ってたから」
「……張り切ることか?」
「ツッコむ方が負けだぜ、っつーか結局お前は俺のメアド知らねえってことか」
「ああ、まあ、知らなくても別に問題ねえし」
「ケータイ貸せ」
「あ?」
「お前のケータイに俺のメアドを登録してやる。だから貸せ」
「何だ、偉そうに」
「俺がお前に何かをして差し上げるってことはそれだけ尊いことなんだよ。いいから貸せ。寄越せ。さっさと動けこの怠け者が」
「うっせえなこの野郎、貨しゃあいいんだろ貨しゃあ」
「そんな優柔不断だから女もできねえんだよ、お前は」
「喧嘩売ってんのかコラ」
「成長促してあげてるだけですけど?」
「……さっさと返せ」
「ほらよ、はいおめでとう」
「どこにめでたいことがある」
「これでお前も晴れて俺とメール交換する権利を獲得したわけだ。めでたいに決まってんだろ」
「……なあ、お前のその、都合良い時だけの楽天性は何なんだ?」
「何なんだって、俺はお前の振りしてるだけだっての」
「はあ?」
「本場の頭の鈍さには敵わねえけどよ。賢く生まれるのも楽じゃないぜ、マジで」
「おい、何だそりゃ」
「質問はメールでのみ受け付けます、ってな」
「慎吾、お前…………クソ、あの……馬鹿が」
(終)


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