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 俺には啓介のことを『お前の弟』と言い、啓介には俺のことを『お前の兄貴』と言う。名前で呼べばいいじゃないか、そう勧めると、慣れねえんだよ、と苦い顔をした。呼んでもないのに慣れるはずがないだろう。正当な指摘をするだけで、理屈っぽい野郎だな、と断ずるのは失礼な話だ。どうやら中里はまだ、俺が俺の弟以上に理屈で物事を片付けられるタイプじゃないことを、分かっていないらしい。今日は幸い、それを教え込んでやるだけの時間はある。慣れるために、理屈は要らないんだぜ。俺は中里を見ながら、そう知らせた。
(終)


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