欲望



 ベッドの上、四つん這いにさせたまま、硬い尻を抱える。挿入すると男は一つ短く高い声を放る。たわんだ背中の表皮に背骨の線が浮き上がり、うねっていくさまが面白い。歓喜を表しているようだ。実際絡みつく肉は清次のペニスをじっくり呑み込んでいる。時間をかけた甲斐はあった。いつもはおざなりにほぐして挿入する。はじめはきついが責めていくうちに徐々に馴染んでいく。拒んでいた肉が緩んでいく、うめき声が高まっていくその過程は官能的だった。ただ、終わった後に無視をされることは面白くなかった。今日はそんなことはないだろう。既に一度射精させてやっている。もうかみ殺せないほどの声が上がっている。清次は行為にふける。時に犯しているのに犯されているような錯覚が生まれる。四つん這いにさせている男に挿入して律動している自分が、男に快感を与えるために仕えるだけの存在に思えてくる。それもまた官能的だった。射精に至るまでの時間は短い。元々長くも短くもない。この男を相手にするようになってから、我慢が利かなくなった。欲望まで飲み込まれているようだった。ペニスを抜く時にまで搾り取られるような感じがあった。コンドームを付け替えている間に崩れた男の腰を上げさせて、硬度があるうちにまた挿入する。数度動いて、止める。取り巻く肉の些細な動きを感じ取る。勃起が持続する。背中の表皮から背骨の継ぎ目が見て分かる。思いついて、挿入したまま仰向けにさせた。勃起している男のペニスも精液がかかったままの胸も、赤く染まって汗にまみれている肌も、快感にゆがんでいる顔も濡れてる目も、すべてが見えた。見たまま、正常位で責め立てていく。あえぐ男が言葉を出す。やめろ。泣きそうな顔をしていた。やめてくれ、と切れ切れに言う。引くと締め付け、押すと受け入れるくせに、何度も言ってくる。頼むとまで言ってくる。清次は男に覆いかぶさり、何も言わずにキスをする。言葉は止まる。腹に男のペニスが当たる。男の舌が清次の舌に絡んでくる。男の腕が清次の首に回ってくる。男の内壁が清次のペニスをとらえて離さない。犯しているのに犯されているような錯覚が生まれる。ひどく官能的で、清次はやはり射精を堪え切れなかった。
(終)

2007/11/10
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