おまけ
ここの奴ら、妙義ナイトキッズの走り屋連中は大体バカだ。俺の地元の連中とは、峠の楽しみ方が違ってやがる。理解できねえことも多い。価値観ってのが違うんだろう。俺は地元の連中の方が良い。理解ができるからな。
それで何でここに来るのかっていえば、理解ができねえ分、気を張らずに済むからかもしれない。地元のありがたみってのもよく分かる。京一のありがたみだ。あいつのリーダーシップ、チームとしてのまとまり。貴重なもんだ。それを再確認する。だから帰った時には気分が良い。リフレッシュになってんだろうな。まあコースも悪くねえし、頭もすっきりするし、バカだらけだが、下手な遊び場よりも良いところだ。
そういうここの一応のまとめ役は、中里という、俺が負かしてやったGT−R乗りで、暇があればリマッチ受けてやってもいいとは思うんだが、積極的には動けねえ。どうも面倒だ。俺の面倒さが伝わるのか、中里もバトルがどうのとかは、言ってこない。プライド高そうなくせに、庶民的な奴だ。変わってやがる。考え方がてんでばらばらなここのバカな連中を、一応でもまとめてるってあたり、変なんだか何なんだか、分かりゃしねえな。
で、何で俺がそいつとキスしてるのかといえば、眠気覚ましってことなんだが。二週間ぶりに顔合わせて、ものの見事にぎこちねえ、前にあったこと気にしまくりって態度で、「今日は大丈夫そうだな」とか言われたら、魔でも差したのか、そう眠くもねえのに、「いや」、と俺は否定していた。「そうでもねえな」
まあ、それでノっかるこいつもどうよと思う。事故防止にそこまで根性かけなくてもいいんじゃねえの。それ利用して、山の中連れ込んで、こいつにキスしてる俺もどうかとは思うが。意味もねえのに。意味がねえからか。まあ、悪くはない感じだ。悪けりゃ二度もしようとは思わない。
「……はあっ、……んっ……」
舌入れて、中をえぐる。ディープキス。男とやることじゃねえんだけどな。今までしたこともねえ。しかし、こいつもよく声を出すもんだ。最初の時は息止めてたか。まあ耳障りってもんでもない。反応がある方がやり甲斐もある。さんざっぱら舌絡ませて中擦って、やばそうな声が聞こえたから一度離してやると、中里は喘いだ。また息止めてたのかお前は。
「おい、もう……いいだろ」
「あー……」
いいも何も、最初からそう眠くもねえんだから、やめてやっていいんだが。どうも、この、涙目のあっかい顔で見られるとな。やめるのも、野暮じゃねえか?
「……んんっ」
感じてる声出されて、腕をぎゅっと掴まれると、ねだられてるみてえ。俺のテクが良いってのか、こいつの感度が良いだけなのか。微妙なもんだ。試してみてもいいかもしれない。もっかい唇離してやる。にしても喘ぎすぎだろ。犬か。
「岩城、もう……」
真っ赤な顔を中里が逸らす。耳を噛むのに丁度良い。そのまま舐めるとビクビクしやがって、やりにくいから、右手で引こうとする腰抱えて、左手でふらふらする頭を掴む。にしても、耳まで真っ赤だな。暗いのによく見える。息吹きかけるだけで、またビクビクしやがるし。
「ひっ……やッ、あ……」
もう、腰砕けそうになってんじゃねえか。けど背中に手ェがっちり回されるとやっぱ、ねだられてるみてえだ。剥がそうとしてんだろうが。どうすっかな。思いながら、耳は口に入れておく。
「ふうっ……う、……うう……」
何つーか、今ごろ声抑えてどうすんだ。意味ねえだろ。まあ、こいつの感度が良すぎるだけってのは分かったし、このまま続けるのも、生煮えか。じゃねえ、生殺しか。正直、俺も似たようなもんなんだよな。どうも、手が別の方に動こうとしやがる。そろそろやめとこう。
「目、覚めたぜ」
耳に言って、体から両手を離すと、歯食いしばってる中里が、おっかなびっくり俺を見て、すぐに間合いを取った。足にキてるみてえだが、腰は砕けてねえから、連れ戻さずには済みそうだ。
「……そ、そうか……なら……ああ……」
口を手の甲で拭きながら、中里がぼそぼそ言う。顔は赤えし挙動は不審だし、こりゃ戻ったら、あのバカどもにからかわれんだろうな。俺の知ったことでもねえが、こんな状態で、事故起こされても後味が悪い。一緒にいて、少しはフォローしてやるか。眠気飛ばしてくれたことに違いはねえし。そうもなかったけどよ。
(終)
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