即行方角対象外



 一度目は抵抗された。二度目もだ。電話が鳴った。ベッドの上、枕元。手を伸ばせば取れる位置。出ることに迷いはなかった。用件を聞くか聞かないかは、いつも出てから決めていた。仲間内の話だった。素行の悪い人間がいる。身辺調査は終わっていた。処分は終わっていなかった。助力を求められた。受けない理由はなかった。右手で携帯電話を持っていた。左手に足を抱えていた。右足だ。その筋肉が張り詰めたのが分かった。直後、左足で蹴ってきた。予想はしていた。携帯電話を持ったままの右手で受け止めて、肩に担ぎ、自分の肘ごと膝をシーツに押し付けてから、通話を再開した。時間はかからなかった。取り込み中だと知られたらしい。否定はしなかった。嘘を吐いても仕方がない。何をやっているかまでは言わなかった。説明しても仕方がなかった。話を終えて、携帯電話を手放そうとした。やめた。話のせいだ。元の体勢に戻し、持ったままの携帯電話を使った。素行の悪さを表す動画を撮るように、性交の良さを表す動画を撮った。それが二度目だ。三度目からは大人しくなった。反応は良くなった。用件を聞くか聞かないかは、出てから決めれば良い。要求を聞くか聞かないかも、やってから決めれば良いのだ。
(終)


トップへ