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「慎吾ってさあ、何であんなイライラしてんの?」
「最近毅さんが構ってくれないからだろ。ほら、あいつゾッコンだし。純情だし」
「えげつねえくせにな」
「そこがいいんじゃねえの? ギャップだよギャップ。あれがいわゆる一つのツンデレだよ。攻略するとデレるんだよきっと、毅さんにだけ」
「毅サンって慎吾サン攻略する気あるんすかね?」
「ないと思う」
「俺も」
「俺も俺も」
「デレ成分出てこないじゃねえかよそれじゃ」
「出なくていいと思います」
「俺も」
「っつーかさ、女に二股かけられてたんだと」
「何、フラれたの庄司」
「フッたみてーよ。そしたらグズグズ泣かれてキレかけたってよ」
「キレなかったのかよ。つまんねえな」
「進歩してるよね、庄司も。昔なら半殺しにしてたでしょ」
「進歩?」
「まあ、最近じゃあFRも潰してねえしなあ」
「え、慎吾サンってFR潰してたんすか」
「知らんのお前」
「っつーかそれ知ってんのって俺とお前と毅さんと往美と大将くらいじゃね? あいつ自己顕示欲強いくせに証拠隠滅完璧にしたがるから」
「密室殺人ってやつですね」
「いやそれ何か違う」
「五人も知ってたら証拠隠滅も何もないと思うんだけど」
「ま、要するに言う奴がいるかいないかでしょ」
「密告者は罰されると」
「で、イライラしてんの?」
「あー、別の男のもん咥えてた女に突っ込んでたと思うと、胸糞悪くなって仕方ねえとかも言ってたなあ」
「突っ込めるだけいいじゃん、なあ」
「そこは同意しかねるね、僕は」
「うわ、何か見えない壁が二人の間に」
「高い壁だな」
「多分お前一生越えられねーよ」
「いや、俺は越えてみせる。慎吾が越えられたものを俺が越えられないわけがない!」
「慎吾って越えてんの?」
「壁によるんじゃね?」
「越えてたらあんなイライラしないと思う」
「女ごときでイライラするとも思えんけどねえ、あいつが」
「女ごときって。ごときって言っちゃったよこの人!」
「それ言っちゃうと、慎吾が毅さん構ってくんねーからスねてる成分100%になっちゃうよなあ」
「え、そっち?」
「実際そうなんじゃね」
「何で毅サンは慎吾サン構わないんすかね」
「構わないっつーか、慎吾のタブラカシに乗りにくくなっただけじゃねえの」
「中里も悟ったんでしょ、構えば構っただけ庄司が反抗したがるってこと」
「おお、あんだけイザコザ起こしといて、ついに気付いたのか! おせーな!」
「遅いっすねえ」
「俺でもそれは気付いてたぜ」
「っつーか毅さんは優しくなったんだろ、慎吾に」
「うわあ、気持ち悪っ」
「え、何で」
「優しくなるのはいいことだよな。優しさは人類を平和に導いて、世界は愛で結ばれる。だからお布施をよろしくお願いします」
「どこの手先ですか、おたくは」
「でも優しさで選択肢選んだら、普通攻略できません?」
「そりゃあれだよ、攻略する気があるかないかって違いだよ。他キャラの好感度も上げといて何様かって話だよ」
「誰の好感度が上がってんだよ」
「誰に毅さんのフラグがあるのか全然分かんねーな」
「慎吾サンにはあるんすよね?」
「あるの?」
「あるからイライラしてんじゃねえの」
「ま、庄司は中里のこと好きでしょ、どう見ても」
「鷹井さあ、そういう背筋がぞっとするようなことサラッと言うのやめてくんない?」
「いやー、当たり前すぎて俺はもう平常心が明鏡止水だけどね」
「つまんねえよなあ。慎吾もキレりゃいいのに」
「何なのお前ら」
「じゃあ慎吾サンが毅サン攻略すりゃいいんじゃないすか?」
「ツンデレが主人公とは新しいな、お前」
「気持ち悪いゲームだなあ」
「企画段階で没だろうね」
「企画する奴いんの?」
「ゲーム業界のことは分からんよ、俺」
「俺も」
「俺ら走り屋だし?」
「なら走ろうぜ。とことん燃料を使うんだ!」
「無理っす、高いっす」
「そこなんだよなあ……」
「はあ……」
「つまんねえよなあ……」
「だなあ……」
(終)


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