触手



「肉食いてーなー」
「なー」
「牛肉いいっすねー。食いたいっすねー」
「よし、焼パーしようぜ! 明弘んチで!」
「さんせー」
「勝手に決めないでいただけますかね、人の家の使用方法を」
「だってお前んチ広いじゃん。汚いけど」
「一言余計なんですけど」
「まああんだけ敷地あっと片づけようって気も起きなくなるのも分かるね」
「俺の家は猫の額ほどしかないので分かりませーん」
「猫の額ってどっからどこまで?」
「目の上から耳の下までじゃね?」
「やー、俺焼肉遠慮しとくわー」
「え、何お前、デブキャラ捨てんのか」
「これは脂肪ではない、筋肉だ。プロテインだ」
「違法薬物じゃないですか!」
「いやいやいやいや」
「っつーか筋肉って何? 肉なの?」
「タンパク質じゃねえの」
「タンパク質って何だよ、淡泊なのかよ。ヤリ捨てすんのかよ」
「それより参加人数大体でいいから決めてもらえませんかね、道具の用意もあるんで」
「ここいんのは全員参加だろ」
「っつーかいつやるんだよ」
「明日の夜。俺休みだし」
「俺も夜なら空いてるぜ」
「俺もー」
「はーい」
「てめえら夜勤の人間の情状を全然酌量してねえな!」
「まあお前一人がいなくても世界はつつがなく回ってくから安心しろ」
「村沢さんは来ないんですよね」
「焼肉はどうもなー、最近脂ものに触手が動かなくてよー」
「触手かよ」
「食指だな」
「触手?」
「いや食指。食べる指」
「指食うの?」
「食わねえだろ」
「触手なんてあったら、……………………いいよなあ」
「何だその間」
「触手プレイって憧れるよな」
「いやいやいやいや」
「俺はチンポ一本で十分です」
「っていうかどこから生えるんだよ触手なんて」
「足?」
「タコ?」
「イカ?」
「足が多い動物上げりゃいいってもんじゃねえぞコラ」
「魚介類っすね」
「折角なんでタコとかイカとかも買っときますか」
「あ、魚介系あんなら俺も行くわ」
「俺カボチャ欲しいっす」
「あー、触手欲しいなー。触手プレイしたいなー」
「俺も毅さんに触手責めしてみてーなー」
「今俺は一切何も聞かなかった」
「俺も」
「触手なんてなくても大人数でよってかかれば毅さんくらい責められるだろ、簡単に」
「空気読まねえなあお前」
「いや、俺有人レイプ属性はないから」
「言ってる意味が分かりませんね」
「レイプはいかんよレイプは。人間として」
「レイパーはとりあえず去勢だよな」
「え、まず尻に突っ込んでやりましょうよ」
「肛門は大事にしないとなあ」
「お前ら毅さんレイプされたらどうする?」
「やった奴ブッ殺す」
「んな急いで答えるなよ、タイムショックじゃねえんだから」
「ファイナルアンサー?」
「それ番組違う」
「ってかする奴いんの? めんどくね?」
「世界の人口六十億だぜ。確率的にはする奴いるのがあり得る話だ」
「ローカル話をグローバルにしちゃうのはどうだろう」
「まあでもとりあえず殺すよな」
「完全犯罪にしますよね」
「物騒だよ君たち、そんなこと言うからあくまで安全な運転を心がける我々の柄が悪いということにされてしまうのだよ。せめて社会的抹殺だけにしておこうよ」
「それも厳しいと思うけどなあ」
「触手プレイはレイプにあらず!」
「触手がこの世に存在しないという点でそれは確実だな」
「んじゃ慎吾がレイプされたらどうするよ」
「やっぱ相手を谷底落としだろ」
「必殺技っぽくてカッケーな」
「妙義最終奥義、必殺! 谷底落とし!」
「おー」
「イタタタタタタタギブギブギブ」
「コブラツイスト?」
「まあ実は谷底落とすだけだけどな」
「毅さんならきっと完全なタイミングで落としてくれますね」
「毅さんが落とすのかよ、パネェな」
「高度なドラテクが要求されるんだから当然だな」
「まあ触手はいいとしても、レイプはいかんね。人生が壊れるね」
「それ比較しちゃう?」
「結局焼パーするんですか?」
「当たり前だろ、肉食うに決まってんだろ」
「んじゃみんなに言ってきまーす」
「触手は言うなよ」
「女が食えねえからって肉を食ってストレス発散とはムナシイ奴らだな」
「あー、高濱さんにお前と夜勤交代してもらうよう言ってやろうと思ったけどやめとくわー」
「この通りでございます」
「速ッ」
「こんなに速い土下座、今まで見たことねえよ」
「群馬最速じゃね?」
「ナイトキッズとしても鼻が高いなあ」
「それを誇るのはどうよ」
(終)


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