討論会



「えー、それでは皆さん、ただいまから『第一回我々ナイトキッズはなぜモテないか朝まで生討論会』を始めまーす」
「おー」
「全然ノリ気しねえタイトルだよなあ」
「っつーかマジで朝までやるんスかね? ネタ続くんスかね?」
「十中十で続かねえだろ」
「俺今日中に帰りたいわー」
「いいか、俺たちがモテないことには理由があるはずだ。その理由を紐解けば、おのずと対処法も知れるというこの一石二鳥!」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず!」
「蛇の道は蛇!」
「ことわざ大会になってどうする!」
「まあぶっちゃけ顔のランク的に無理がありますよね、モテるには」
「そこ、さらっと残酷な現実を述べるな! 悲しいだろ!」
「整形すんのもなー、親から貰った大事な体を傷つけちゃうしなー」
「っつーか整形してもあんま変わらねえ気がします、元のツラ的に」
「でもランクって平均値取ったらそりゃ低くなりますけど、中には高い人もいるじゃないですか。そういう人を前面に押し出すべきだと僕は思うんですよ」
「誰お前」
「え?」
「ランク高いのったら、城山とか?」
「けどあいつ基本三次元興味ないじゃん。自分磨きの旅に出る気全然ないじゃん」
「雅一もなー、俺結構イケんじゃねえかと思うのよ。昔来てた女の子があいつ目当てだったから」
「あいつの場合はイケるっつーかフツーに嫁さんいっからなあ」
「子供二人いるしなあ」
「不倫はいかんよ不倫は」
「まあ顔は変えようがねえやな」
「つまり変えれるとしたら雰囲気だ。雰囲気イケメンになるんだ!」
「どういう雰囲気がイケメンなんスかね?」
「そりゃお前、あれだろ。スティーブマックイーンだろ」
「いやそこはスティーブンセガールだろ」
「アメ車はやめろ! でかいだけだ!」
「何ですかその固定観念」
「とりあえず鍛えりゃいいのか?」
「いやー、ガチムチはヤバイっしょ。ドン引きっしょ」
「中には筋肉マニアもいますけどねえ」
「マニアにモテたって仕方がねえ。それはある意味今の状態だ」
「俺ら何のマニアにモテてんだよ」
「ゾク?」
「ヤンキー?」
「ヤクザ?」
「Vシネ?」
「思いきり裏社会じゃねえか!」
「俺、ヤーさんなんて一度も見たことないのに……」
「俺暴走族すら見たことねえや。実在すんの?」
「たまに夜中うるさくね? 微妙な時間に吹かされっと寝れねえんだよなあ」
「俺ら暴走族と違うの?」
「そりゃ違うだろ。暴走はしてるけど」
「まあ違うよな。交通違反はしてるけど」
「当然違う。集団で活動してるけど」
「やべえよ……否定しても説得力がねえよ……」
「でも別に街中練り歩くわけじゃねえしなあ」
「パトカー相手にバトりたいとも思わないしー」
「っていうかパトカー怖い。警察怖い。ごめんなさい」
「めっちゃ低姿勢だよなー」
「それでなぜ俺たちが悪党集団のような扱いをされなければならないのか、ここに俺たちのモテない度を左右するファクトがあるはずだ!」
「まあ顔ですよね」
「あと雰囲気だな」
「真実すぎてぐうの音も出ないぜ……」
「でもそれ変えたらナイトキッズじゃなくないですか?」
「全員雰囲気イケメン目指すってのもどうかって感じだしなあ」
「んじゃここは一つ、トップ張ってる毅さんの雰囲気をこう、もっとサワヤカーな感じにですね」
「毅さんは既にサワヤカーだろ。全体的に」
「いや、サワヤカーではあるんだが、濃いんだよな。全体的に」
「頭全剃りとかどうよ」
「坊主か!」
「いやいや、毅さんはあの髪型っしょ。イメチェンとかありえねえ」
「アバクロで揃えてる毅さんってのも想像つかねえ」
「でもユニクロってタイプでもねえよな」
「意外とアメカジいけませんかね?」
「アメカジ……」
「……ガキ臭くね?」
「ゴルフ帰りの係長に見えて、意外と童顔なんだよな……」
「サワヤカーにはなるだろ多分」
「なりすぎて近寄りがたくなるんじゃねえの多分」
「峠に似合わねえよなあ多分」
「っていうかこれ毅さん改造計画になってんじゃん」
「あれ、それが議題じゃねえっけ?」
「俺考えたんですけど、趣味が車というとオタク扱いされる昨今、モテる走り屋こそマイノリティなんじゃないですかね」
「あ、モテるモテねえな」
「ふむふむ」
「で?」
「で、それでいくと走り屋はモテなくて当然なんですよ。モテる走り屋なんて女に媚びているだけの愚民であって、真の走り屋ではないんです。モテない走り屋こそが走り屋なんです、宇宙が動いているのではなく地球が動いているんです、コペルニクスは正しかったんです!」
「おー」
「何か説得力あんね」
「コペルニクスって誰?」
「さあ」
「そうか、モテない俺たちこそが走り屋なのか! これは目からウロコの発想だ!」
「そうなのかなあ」
「まあそういうことでもいいかもしんねえな、どうせモテねえし」
「そうなんです! 女にモテるは走り屋にあらずです!」
「女にモテるは走り屋にあらずー!」
「うわ、叫んじゃった」
「走り屋たるもの媚びるべからずー!」
「車オタクの何がわるーい!」
「売女どもに天誅をー!」
「コペルニクスばんざーい!」
「毅さんは普通にカジュアル系でいったらカワイーと思いまーす!」
「ばんざーい!」
「趣旨が分からなくなってきましたね」
「毎度だな」
「今度俺の手持ち毅さんに着せてみましょうか」
「もはやそれが本題じゃねえか」
「毎度だな」
(終)


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