視点論点
「百姓っぽいとこじゃね?」
「お前はいきなりぶっこんでくんじゃねえよ」
「否定も肯定もしがたい意見だよな」
「まあ百姓っぽさってのは慎吾にはないから、そこに心惹かれるという解釈も成り立たないわけではないという考え方も……」
「っつーか百姓っぽさって何?」
「トラクター似合いそうじゃん」
「見かけかよ!」
「むしろトラクター似合わねえ走り屋なんていんのかよ」
「いやその括り意味分かんねえ」
「あー高橋兄弟」
「それだ!」
「うっわ、あいつらトラクター乗ってる場面とかゼンッゼン想像できねえ」
「俺は想像できるけど、絶対あれだな、ヤラセだな。企画だな。素人じゃねえな」
「まああいつらベンツのトラックでも似合いそうにねえし」
「まさかそんな身分の奴らが俺らの身近に存在するとは……」
「別に身近じゃねえだろ、同じ県内の走り屋ってだけで」
「だから慎吾は高橋兄弟好きくねえべ? そこだよ」
「どこだよ」
「そもそも高橋兄弟好きな奴なんてうちのチームにいるのかね」
「でもあいつらの写真って売ったら金になるからなあ」
「は?」
「マジで?」
「え、お前高橋兄弟の写真売ってんの? いくらで?」
「いや昔の話だぜ。高橋兄弟っつーか、当時弟なんて出てもなかったから俺高橋涼介のしか売ってねえし。時価で」
「ウニかよ!」
「ウニ並だったよなあ、あれ。そういや真子ちゃんも買ってたろ」
「いやありゃ俺があげたんだよ。可愛かったから」
「マコちゃん?」
「魔女っ子?」
「碓氷のだよ。どうせなら代わりに処女貰っときゃ良かったかな。多分あん時まだ処女だよな」
「っつーか今でも処女じゃねえの。あー、あの子の処女膜確認してみてえ。覗きてえ」
「ちょっと待ちたまえそこの変態紳士たち、え、何? 碓氷の真子ちゃんって高橋涼介の、え?」
「ファンなんだろ」
「まあ好きそうだよな、見るからに」
「何お前ら冷静ぶってんだよ! あの真子ちゃんが! あの真子ちゃんが! あんなイケメンカリスマストリートキングなんぞにお熱だなんて、そんなことを許せるのか貴様らは!」
「そりゃイケメンでカリスマなストリートキングが相手っつったら、まあなあ」
「っつーかアイドルみてえな感じだろ? 要するにジャニーズだろ? マッチだろ?」
「真子ちゃんはマッチいかねえだろー、ギンギラギンだぜ」
「でもほらマッチはレース出てたし、さりげないし」
「くっそ何なんだよ……高橋涼介が何だってんだ……そんな奴の写真売ってんじゃねえよ……ナイトキッズなら毅さんの写真売っとけよ……」
「それもどうよ」
「いや毅さんの写真なんて売りたくねえよ勿体ねえ。高橋涼介なら別にどうでもいいけど」
「分かるような分からんようなモッタイナイ精神だな」
「まあでも実質的には毅さんよりはやっぱ高橋涼介なんじゃねえの。ゾウとアリくらい差ァあるだろ、需要に」
「毅さんのどこがアリなんだよ! せめてハムスターにしろよ!」
「その微妙な譲歩も意味分かんねえ」
「っつーかそれ毅さん知ってんの?」
「んなわけねえだろ。高橋涼介の写真売った金でチームの飲み会の赤字今でも補填してるとか知られたら俺多分シバかれっから言うなよマジで」
「え、積立金財テクしてたんじゃないかよ」
「まあ俺らのチームに財テクできるほどの資本があると思うのが間違いだよな」
「そうか、我々の飲み会は高橋涼介の肖像権の犠牲の上に成り立っていたのか……」
「今度から赤城山の方に乾杯しねえとな」
「万歳三唱もしとくか」
「ところでよ、誰か何の話だったか覚えてる奴いるか?」
「トラクター?」
「ウニ?」
「俺としては真子ちゃんの処女性についてもっと語り合いたい」
「その顔で言うな。気持ち悪ィぞ」
「なら俺は毅さんの処女性について……」
「そこ張り合うな。もっと気持ち悪ィぞ」
「っつーか毅さんの写真持ってんなら今度一枚くれね? 折角だし」
「あ、俺も俺も」
「いいけどよ、慎吾には見せびらかすなよ。俺あいつにターゲットロックオンされたくねえから」
「あれ? そういや何か、慎吾の話じゃなかったっけ?」
「だっけか?」
「まあそれは思い出さない方があいつのためだな」
「だなあ」
(終)
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