被り物



「お前昨日アレだろ、合コン」
「おーそうだそうだ、イイ女いたかよ」
「当たり前じゃねえか、俺が集めたんだぜ。自分で。なのに誰もお持ち帰りできねえっつーな!」
「な! って言われてもなあ」
「っつーかメンツ誰?」
「俺」
「他だよ」
「俺の記憶が確かなら、土佐と潤と慎吾とカークンだろ」
「うわ正解何その記憶力」
「無駄にいいな」
「無駄とか!」
「それ友哉のいつかシバく奴リストに入ったんじゃねえの。合コンなんて抜け駆けすっから」
「抜け駆けってなあ。ならお前も知り合いの女にひたすらタカられてみろよ。財布が大火事だぜ。ジンバブエ並のインフレ起こすぜ」
「女の子と同じ空間にいれんなら、ジンバブエでもパラグアイでもどこにでも行くぜ、俺は」
「ごめんそれ会話噛み合ってねえと思うわ」
「っつーかそのメンツって女と会話噛み合うのかよ。うちの四天王じゃねえか」
「何の?」
「何かの」
「まあでも、みんな飢えてる奴じゃねえから」
「どうせ俺は焼畑農業の跡地だよ!」
「燃え尽きた?」
「砂丘化だな」
「慎吾なんて特にアレだぜ、まるでアレだ。親猫に咥えられた子猫のような大人しさだったからな」
「そこ普通に借りてきた猫でいいんじゃね?」
「あいつもお持ち帰りしてねえの」
「ないない、連絡先は交換してたけど」
「ちゃっかりしてんなおい」
「他は?」
「まるで借りてきた猫のような……」
「違いが分からんな」
「違いの分かる男はどこかにいないのか!」
「いいなー、俺も女の子の連絡先欲しいわ。電話帳に女の子の名前入れてーわ」
「入れれば?」
「架空のやつな」
「まあ男の名前もその気になりゃあ女の名前に見えなくもねえし?」
「どの気だよ!」
「このー気なんの気」
「イノキ!」
「イエー」
「あ?」
「いや、何か顔悪ィなお前」
「そこ顔色悪ィってちゃんと言ってくんねえかな。事実でも人に言われっと割と傷つくから」
「スーツの顔で悪いっつったら松下なんてどうすんだよ。人間じゃねえぞ」
「異星人?」
「深海魚とか」
「お前も合コンしたいってんならそう言えよ。いくらでも都合してやるから。お持ち帰りできなくても自己責任だけどな!」
「えばって言われたくねえなあそれ」
「いや、俺慎吾普通に毅さん狙いだと思ってたからさ」
「は?」
「何?」
「あいつも合コンとかするのかと。意外だった」
「え、何が?」
「っていうか普通にあいつ毅さん狙いとか見てたお前が意外っつーか、キショイわ」
「っつーか会話噛み合ってなくね?」
「お前が理解できてないだけじゃね?」
「ハァ?」
「だってあいつ毅さんが松葉とかと話してっと機嫌悪くなるし、そもそも毅さんいねえとテンション微妙だし」
「あー?」
「松葉? 何で?」
「スキンシップ過剰だからじゃねえの、あいつ。距離近いから」
「まあ基本近いよな」
「近すぎだよな」
「それむしろ松葉狙いなんじゃね?」
「ないわー」
「俺的にはあいつ、毅さんいねえ方が元気に見えるぜ」
「松葉?」
「慎吾だろ」
「……あいつと元気って言葉ほど似合わねえもんもねえな」
「元気百倍ってキャラじゃねえからなあ」
「でもまあ、毅さんいねえ方がノリいいよな。自然っつーか」
「そりゃ毅さんいたら、カッコつけたがるからだろ。少しでも大人に見せたがる」
「あー……?」
「小学生?」
「中二じゃね?」
「一時期改善されてたのに、ぶり返してきたからさ。諦めきれないんだなと」
「何つーかそれ、斬新な考え方だよな」
「斬新すぎて理解辛えよ」
「なあ、そこまで慎吾の様子観察してるお前が慎吾狙いって話じゃねえよな?」
「いや、俺は毅さんも観察してるから」
「へー」
「いやへーって」
「もう相槌も尽きましたね」
「心が砂丘化だな」
「俺思ったんだけど、母ちゃんの名前入れたら女の名前でオッケーじゃね?」
「母親を女として見るってそれ難易度高えぞ」
「ごめんもうこの話意味分かんねえわ」
(終)


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