個人的事情
「お前よ、車のことで批判されるんなら俺だって真面目に受け止めるぜ。同じ走り屋、チームメイト、一蓮托生の仲だ。でもな、だからって個人的嗜好にイチャモンつけられる筋合いねえよ」
「何カリカリしてんだお前」
「あー、カルシウム足りねーんだろ。煮干食え煮干」
「こいつが俺のプライバシーを侵害しやがるんだよ。失礼極まりねえ」
「えー。プライバシーの概念知らねえ原始人には関わりたくねえなあ」
「待てよお前ら、おい、女になってレズプレイしてえとか言う奴と俺と、どっちがまともかくらい分かるだろ?」
「はあ?」
「だからてめえはプライバシーの概念分かってねえだろ! そして男のロマンも分かってねえ!」
「いやー、女になってレズプレイなロマンを男でしめられんのは納得いかねえなあ」
「まあアリな方なんじゃね? マグロな女とやってたら入れ替わりてえとか思うし、でも野郎にやられたかねえし、だったらレズプレイっつー感じでよ」
「ホモビデオ持ってるよりはレズビデオ持ってる方がまともだろ」
「それはまともかどうかって話とは違うんじゃねえかと思うんだけどよ」
「ホモビデオ持ってんのはホモの可能性高いけど、レズビデオ持ってるからってレズにはなんねーじゃん。っつーか男だし」
「だからロマンなんだよ。大体普通のAVだってだな、下手すりゃ男のチンポだのケツだの映ってる時間の方が長いやつあるんだぜ。そんなもん見て抜ける方がおかしいんだよ。女体だけ映してりゃいいんだ女体だけ」
「あー、そういやアナルものってケツからのアングル多いよな。3P入ると男率異様に高くなるし。あれは退屈だ」
「お前見たことあんの?」
「いや、そっちの方がクオリティ高いの探す甲斐があるからよ。当たり見つけた時にはもうすっげー最高だぜ。並のやつよかマジ可愛い子いるんだよなあ」
「っつーか普通一人の女に男二人の3Pってアリなワケ? 俺絶対無理なんだけど」
「俺ヤれりゃあ何でもいい」
「雑食は意見としては数えらんねえな」
「俺も3Pになると冷めちまうな。他の奴に自分のエッチ見られたくねえし。他の奴に自分の女やらせたくねーって」
「自分の女がいねえ奴の意見も数には入らねーだろ」
「てめえは煮干喉に詰まらせて死ね、骨粗鬆症予備軍が」
「レイプとかなら気になんねーんじゃねえの。気が大きくなるっつーか、赤信号もみんなで渡れば怖くないっつーか」
「げ、お前レイパーかよ。うわーそれ引くわー」
「いやしたことねえよ俺。やろうとしたって絶対勃たねえ。死んでも無理。やるくらいならむしろ死ぬ。っつーか、レイプしたことある奴なんてうちのチームにいるか?」
「そんなに犯罪者率高くねーだろ、うち。見かけより」
「やってることを犯罪と認識できる率も高くねえ気するけど」
「っていうか見かけもそんな犯罪者率高くねえと思うぜ。どっちかっつったら俺ら、平和の使徒っぽくね?」
「ノーコメント」
「右に同じ」
「少しはコメントしろや、その口は飾りかよ」
「まあ、泣き叫ぶ女を前にして勃ちそうな奴がいるかどうかだよな」
「普通に話題に戻るね君も」
「慎吾とかは?」
「あいつか。あいつはなー、女レイプするよりFRのカマ掘ってる方がイケるタイプだろ」
「っていうかあいつ案外女関係興味ねえよな」
「ホモじゃねーの?」
「いやー、多分EDだろ。どんないい女見ても勃たねえんだぜ。可哀想に」
「だから車で憂さ晴らしするわけか。そう考えりゃああいつもホント可哀想な奴だな」
「っつーかそれ事実みてえに話すなよ。信じかけるだろ」
「信じる奴はただ馬鹿だ。信じない奴もただの馬鹿だ」
「何じゃそりゃ」
「その言葉に含蓄感じる奴が馬鹿っつー話じゃね? っつーか俺はレズプレイもアナル責めもどっちもどっちだと思うぜ」
「いや、それは明らかに違う。かたや同性愛でかたやプレイの一種だ」
「AVだったらどっちもプレイの一種なんじゃねえの?」
「SMは?」
「ソフトならいいけどよ、ハードすぎんのは精神疑っちまうな。特に拷問系。泣きそうになるのとかあっからよ、ひどすぎて」
「お前も何だかんだ言いつつ色々見てんだな」
「まあな。でもスカトロだけは無理。吐く」
「俺はレズプレイとスカトロならスカトロ選ぶね。感情移入できるから」
「あー、それか。そうだよなー、結局やるのって自分だもんなー」
「でも俺は神様に何か一つ願いごと叶えてもらえるとしたら、一日だけ女になりてえ。で、ヤりまくりてえ」
「うっわー、それも引くわ」
「っつーかどっから話つながってんのか分かんねーし」
「いや、あれだよ。一日だけならいいじゃねえかよ。俺が女になったら絶対童貞に股開きまくってやるぜ。そこらの売女に限って選り好みしやがって、天誅だ!」
「いや意味分かんねえ」
「そもそも女になったてめえとヤりてーと思うのはよほど童貞で窮まってる奴しかいねーと思うぜ」
「現実言うなよ。っつーかんじゃお前、誰とならヤりてえワケ?」
「あー? あー……」
「うわ本気で考え出したよこの人。話つながってねえのに」
「想像力あるよな。っつーかお前ら走らねえの?」
「雨降りそうじゃん。降り始めてから走ろうかと思ってよ」
「敢えて危険に臨むってか」
「車乗る以外やることなくなるし」
「そっちかよ」
「もうそろそろきそうなんだけどなあ。匂い的に」
「雨の日の匂いってあれだよな。掘っ立て小屋に湿気溜まったみてえな感じ」
「いや普通にアスファルトとか埃とか湿る匂いだろ」
「お前想像力ねえって」
「あー、やっぱこの中なら毅さんだな」
「俺こいつは見習いたくねえよ」
「それは俺もそうだ。っつーかよく結論出したな」
「あの人とならレズプレイしてもいいと思えるぜ。やっぱ目ェ大きいのは外せねえ。あと感じやすそうだし。そのくせ道徳観念強そうなあたりがいいよな。落とし甲斐がある」
「お前マジで想像力豊かすぎるって。ついてけねーわ俺」
「ホモプレイ飛び越えてレズプレイってのはなかなかいけねえよな」
「っつーかそれこそ引くわ。ありえねえ。理解できねえ」
「プライバシーの概念理解できねえ奴に理解してもらいたくもねえよ、俺のイマジネーションを」
「一足飛びだからこそ理解できるって面もあるんじゃね? 確かに俺も、毅さんとホモプレイは厳しいけどレズプレイならまあいいかと思えなくもねえ」
「まあ想像の世界だもんな。想像の世界ならホモプレイでもスカトロでも何でもアリってなもんだろ。現実じゃねえし」
「あー、毅さんが女だったら俺もう結婚してもいいんだけどなー」
「そこまでいくかい君は」
「どっか頭打ったんじゃねえの。それか全財産スッちまったか」
「想像は大事だぜ、諸君。人生が豊かになる」
「いやいや、ちゃんと現実見ねえと。ほら、雨も降ってきた」
「そろそろ行くか。誰先出る?」
「俺出るわ。次お前な。うわ、クソ、ってかこれひどくね? 走れんの?」
「まあ……安全運転でな」
「意味ねえじゃん」
(終)
2008/05/20
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