延長 1/3
眠りは快適であり、体は柔らかく、体温は平常、思考は澄み渡っていた。鏡に映る己の顔はさておき、高橋涼介の主観的調子は最高であった。夢も見ず、学生たる本分に重大な失敗もなかった。級友との関係は上々であったし、旧友には連絡を入れ、身内の取り扱いに関しての感謝の意を表明した。そして思いを強くした。
何事も、結果は出すべきなのだ。
少なくとも一つの結論は既に出ている。あの男の顔、体を、声を、はっきりと思い出すことができ、その上で通常では認めようのない欲望による空想もし、またそれを現実として達成したいと望んでいる。またその己の望みは、一度でも相手に告知してしまった以上、ないものとはできない。
今、涼介は自覚している。どうにもならないことへの足掻きも一つの人格を容易く統御しようとする挑戦も、挑戦の成果や空想の実現化を目の当たりにして生じた焦燥も、すべては元来抱えていた己の、ほのかな自由意志が無効となる環境の不条理さへの反抗だった。そして長年目を逸らし続けてきたそれを、あの男と関わるうちに意図をせずとも吐き出してきたのだ。
今、涼介は自覚している。そして、そうする相手があの男である必要はなかった。ただ薄い関係性でありながら偶然による多数の接触の機会が生まれたために、ついでとばかりに選び取っただけだった。そこには格別の好意も優遇意識も存在してはいなかったのだ。
しかし、と涼介はそれまでの自己分析を思考の塵塚に投げ入れ、思った。
それはもう、終わったことだ。
今、掃除を人生の楽しみの一つに据えている人間がしばらく帰宅していない家を後にして、職業を人生として私生活をなおざりにしている人間が愛することのできなかった車を使い、涼介はそこに立っている。居慣れた山とは違う、若干獣くさい匂いがたまに鼻を突き刺していく場所だった。風は強かった。今年の雪はいつ降るのか、冷える首に手を当てながら考えた。
「この車は、何なんだ」
低く焦りの浮かんだ声が耳に滑り込んできたため、涼介は冬の到来の予想を中断し声の主を見やった。三日ぶりに目にする男だった。親父のだよ、と、曖昧な懐かしさを運んでくる、少々肌の荒れているようにも見えるその顔を見ながら涼介は答えた。
「買ったはいいが、使いづらいと言ってほとんど乗ろうとしないんでな。俺がたまに動かしてやっている」
「もったいねえな」
「売った方が良いと言っても、持っておきたいと言うんだ。困ったもんだよ。車は動かすためにあるってのに」
「そりゃそうだ、お前、来ないかとばかり思ってたが、そういうことか」
合点したように言った中里に、それもそうだが、と涼介は返した。
「その都合は良かったってのもな、確かにあったが、お前に言った当初は来るつもりはなかったよ」
中里は太い生えっぱなしの両の眉毛を微妙にあげ、不審を露わにした。
ただ、と涼介は事の説明を試みた。
「気が変わったんだ。そして、終わらせるべきなんじゃないかと考えた。終わらせられるんならな。もう何もなかったことにして放り出すには、手が広がりすぎている。最初に方向性が定まっていなかったからだろうな。だがそれはお前のせいでも俺のせいでもない、他人の感情の動きを完全に把握できる人間の方が珍しいもんだ。しかし結果としてこうなった以上、最善は尽くすべきだと」
自分の発する言葉に強烈な違和感を覚えていき、ついに涼介は声を切った。具体性がなく、漠然とした内容だというのに全体の説明にすらならない、これではまるで時間稼ぎをするための話であり、涼介は、俺は引き延ばしたがっているのか、と訝った。
「最善か」
中里が呟いた。ああ、と涼介が己の心中に注意を据えたまま頷くと、少しの空白ののち、「お前に言われたことを」、と、焦りと戸惑いで不安定となっている声で、中里は涼介のためらいを割ってきた。涼介は車の窓へ移していた目を上げた。中里は瞬きを繰り返し、勢い良く息を吸い込んで吐いているところだった。
「想像してみたんだよ」
三度目に息を吸い、ようやく中里はそれを言った。涼介はうなじがざわつくのを感じながら、ああ、としっかりとただ頷いた。
中里は何かを確かめるために周囲を見回したのち、筋肉を強張らせた決死の面持ちで、口を正しく動かし、「興奮した」、と呟いた。その言葉を頭に落としてから、ああ、と涼介は再びしっかりとただ頷いた。中里は目の端を震わせていた。涼介は眉間を人差し指で掻き、目を閉じ、希望通りの展開の滑稽さに、緩むとともに軋みそうになる頬を押さえながら、返す言葉について考え、目を開き、顔を静かにした中里を見た。
「俺もだ」
言うと、目の前の男の驚愕が空気を震わせ、生じた波が顔面にぶち当たったような錯覚に陥り、涼介は右手で顔を撫でた。中里は俯いて目をつむり、認識を改善しようとしているかのように額に指を当てていた。最善は尽くすべきだ、顔を覆い続けようとする右手をズボンのポケットにねじ込み涼介は思った。他者への説明が可能なまでにこの関係を処するべきだ。それこそが俺のためでもありこいつのためでもあり、そして俺の脆弱な自我によって巻き込んでしまった者たちのためでもある。
「どうも俺たちは」
出した涼介の声は存外安定しており、顔を上げた中里はその音に微かな恐れを抱いたようだった。涼介はそこに生じた不安を和らげてやろうと微笑を作ったが、中里はそれを怪しく見るだけであり、しかしだからといって即刻に微笑を消すわけにもいかず、それを自嘲に変えてしまうと、ともかくも言葉を吐いた。
「考えすぎているんじゃないかと、思うんだよ。例えば何らかの分岐があり、そこから千の事象が起こりうる可能性があったとして、その起こる確率の差に関わらず、すべてを同等に起こりうることだと想定してしまっているようなものだ。機械ならばそれはやって然るべきことだが、俺たちは人間なんだから、最低限の取捨選択をしたところでそれは責められるべき行為ではない。そもそも知恵は偉大ではあるが、それにより感情が制御されることがあらゆる場面で歓迎されるなどということは、ありえないんだ」
中里は首を左に少し傾けて、眉間にしわを作りながらも精神が抜け落ちた表情で涼介を見ていた。唾を飲み込み笑みを消してから涼介が、分かるか、と尋ねると、中里は傾けた首を真っ直ぐに戻し、右斜め上を見た。
「それがどういう話につながるのかが、分からねえな」
「つまり、俺たちが今すべきことは、余計な前提にとらわれないことなんじゃないかとな」
余計な前提、と中里は小さく呟いた。注釈の不要な説明を成せずに終わったその失敗に右の手を握り締めながら、涼介はそこに答えが乗っているかのように左手を開き、先へと進むことにした。
「俺が誰であるだの、お前が誰であるだのってな」
詳細を述べると、中里は眉間にしわを増やし、それが余計か、と不審がった。涼介は一つ溜め息を吐いた。
「過度に気にするくらいなら考えない方がマシだってことだよ。俺がどこの誰なのかもお前がどこの誰なのかも、何に取り巻かれていて何にしがみついているのか、何を持っていて何を持っていないのかも」
「それはあって、当然のことじゃねえのか」
「普通はな。だがそれを忘れるべき場合もある。こういう考え方は個人的に嫌いだが、仕方ない。そういう風にしなければならないこともあるんだ、例えば」
言葉の選択を間違えたことに気付き、涼介は息を止めた。舌打ちし中里を見ると、眉を上げて続きを待ち構えていた。気に食わなかった。その中里の表情にでも態度にでも前提へのこだわりにでもなく、ただ己の会話の運び方に納得がいかなかった。
話の引き延ばしにはそれ相応の効果もある。事態を複雑と見せかけることにより目的地を知っているこちらのみが主導権を握ることができるのだ。だがそれは最初から予定されたことではなく、ただこの男を意図する通りに動かすことを嫌っているがゆえの成りゆきであり、それは思惑を持たぬうちに結論のみですべてを解決しようとした己の傲慢が招いた当然の帰結だった。反抗への諦めが足りず、決着をつけるという覚悟も足りなかった。
「例えば?」
焦れたように、中里が言った。
涼介は己のしくじり、決意の薄さを内心で責めながらも、しかし全体では許容しており、そうする己の甘さを愚かしく思いながらも愛しくも感じ、そう感じられることを目の前の男に感謝した。陽性の人間味を認めるのは久しいことで、事の運び具合は気に食わないながらもそれ以上停滞させるほどのこだわりもしぼみ、涼介は頬を上げ、唇を震わせながら、例えば、とやっと続きを言った。
「恋に落ちた時だ」
中里は目に見えて固まった。生命の主張もなくかといって息を潜めることもなく、ただの肉の塊としてそこにいた。涼介は目をつむった。脳裏には脈絡もなく初めて車のステアリングを手にした時のことが過ぎっていた。あの衝撃、新鮮さ、重さ、硬さ、興奮。胸が急激に高鳴った。顔に血が行き渡るのが感じられた。初めて手に入れられるかどうかの不安や焦燥や期待や失望、ごたまぜの感情が蘇った。かつて弟の才能を見出した時、そして藤原拓海を目の当たりにした時、どれもこれもは走りに関わることだというのに、これだけは、これのみは、明らかに暮らしにおける他人の時間の所有への葛藤だった。
「それは」
しばらく言葉を失っていた中里が、ひどくかすれた声を出し、涼介は目を開いた。
「例えか」
恐怖にも歓喜にも見える、震えた顔と震えた声を中里はしていた。涼介はもはや待機時間の多い計算による行動と裏手へ回ろうとする理性を放棄し、攻勢に出ることとした。
「例えじゃないと思うのか?」
見据えると、中里は何とも答えようがないように唇を曲げ、右足にかけていた重心を左足に移し、力の抜けた右足を後ろに引いた。逃げたい素振りとして明白だったが、そこで中里は立ち止まった。どういう心情を抱えているのであれ、相手が抗戦するつもりならば同情も遠慮も不要だった。そういう部分で、と涼介は顔色を変えないうちに言い立てた。
「お前は考えすぎているんだよ。俺は今まで言葉通りの意味を持つことしか言ってはいない。例えはあくまで例えであり、それがこの状況で適応するかは別の話だ。それを知りたいならお前はもっと、直接的に聞くべきじゃないか。それは、俺がお前に恋をしているかということか、とでも。そうしたら俺も直接的に答えてやろうと思うもんだ。中里、婉曲に尋ねるだけで真実を得ようなんて、差し出がましいにも程があるぜ」
「遠回しに言ってんのは何だって、てめえの方じゃねえか」
突然低く小さいが、怒気を含んだ音が顔面を圧迫してきて、涼介はポケットにしまいこみ汗をかき始めた右手を動かしかけたが、狼狽していると誤解されることを危惧し、その場に留めた。白目が落ちかけるほどに目を剥いてしている中里は殺気立った表情だったが、そこにたぎる憎しみは決してこちらに向けられているのではないと知れた。そこで初めて涼介は結果の一様さを悟った。これまでの中里の言動、怒りと苛立ち、承知と拒絶、意地と諦め、どこから来てどこへと行くのか、それを涼介はようやく認めたのだった。
「俺?」
「俺が聞かなきゃ答えねえのか、俺が言わなきゃ言わねえのか。そんな優柔不断な野郎だったのか、お前は」
非難するように言った中里の、その言葉すべてを涼介は肯定できたが、出すべき結果の実体を知ってしまった今ではそうすることにつまらなさを感じ、「俺が」、とその場限りでの反論を作った。
「遠回しに言っているように感じるんなら、それはお前の質問の仕方が悪いからだろう」
「そりゃ、初めのお前の話し方が分かりづれえからだろ」
「本当に知りたいと思うのなら、文句をつけるのは後回しでいいはずだが」
「後回しにしちまったら余計分からなくなるからだ、クソ、大体、そんなことを面と向かって聞けるほど俺は、恥知らずじゃねえんだよ、勘違いするな、この野郎」
中里は多くの舌打ちを交えながら言った。
慎みは美徳である。直接的な質問に恥を覚えることも無駄ではない。だが、この期に及んで逡巡を見せるのは一貫性がないと涼介には思え、勘違い、と呟いてから一歩の距離を取り戻し顔を寄せると、「しかし」、と囁くように指摘した。
「興奮したんだろ」
大きく開いていた目を更に開き、中里は口も大きく開き、しかし無言のままに閉じ、その顔にのぼっていた暴力的な表情は、強くなった血の気によって削ぎ落とされていた。涼介は赤味を増す中里の顔を何も言わずに見続け、そして作られた沈黙は、「何だってんだよ」、と、まず声をなくした中里によって破られた。
「オイ、お前なんざただ普通に頭が良くて普通に顔も良くて背も高くて、弁も立ってドラテクも最高、だが所詮すねっかじりの金持ち息子、かどうかは正確には分かんねえが、とにかくたかがハタチをいくらか過ぎたくれえの若造、人間だろうが。どっか突っつきゃ欠陥だって出てくるだろ。何でそんなお前に、この俺が歯向かえねえんだよ。いや、歯向かうなんて言葉だってお前、まるでお前が俺より上みてえなもんじゃねえか、何でそんなことを俺が自分で言わなきゃならねえ」
「それは」
質問か、と語尾を切るように鋭く涼介が言うと、中里は一瞬たじろいだものの、ああそうだ、と奮い起こしたように首を縦に振った。
「質問だ、答えられるもんなら答えてみろ。ここまで話してて何の説明もできてねえお前ができるんならな」
「説明はしてるが、お前が理解してないだけだ」
「ああ?」
「理解しようとしていない」
「お前、勝手に決めてんじゃねえよ、だからそれは」
「最初からできないものと決めつけている」
「それはそっちじゃ」
「好きなんだろう、お前は俺が」
わざと端的に涼介は、何気なく言った。それだけだ、と付け足す時にはもう、中里は額と目元を右手で覆っていた。それだけだ。あるいは単に中里は涼介を苦手としているだけかもしれなかったし、中里はまったく他人に歯向かうことのできない男なのかもしれなかった。だがそれらは何の答えにもなりはしないと涼介は考えた。なぜなら中里がそういった答えを求めてはいないと考え、確信したからであった。そしてその答えの正しさを後押しするかのように、手で隠されていない中里の皮膚はその底の血の奔流をくっきりと見せていた。その素早さと明瞭さを見るにつけ、結論をこちらから提供せずとも黙っていればこの男はいずれ自ずから吐露したと確信されたが、それはさすがにふしだらで優柔不断という見方も偏見によるというだけでは済まされなくなるとも、涼介には感じられたのだった。
中里は右手で顔全体を撫ぜると、その手でがりがりと後頭を掻き、太ももをジーンズ越しながらも気持ちの良い音を立てて叩き、俯いたまま深呼吸を一つして、突如、喉の奥で笑い出した。小さい笑い声はすぐにやみ、だが口の笑みは消さず、何度も一人で頷き、分かった、と言うと、血走らせた目を涼介に向けた。
「お前がそうまで言うならな、白状してやろうじゃねえか」
誰もしろとは言っていない、と涼介は一応に責任の回避をしたが、その発言を聞いた様子もない速度でもって、うるせえ、と声を潜めながらも中里はいきり、人差し指を突きつけてきて、黙って聞け、と命令した。涼介は黙った。命令されたからではなくわざわざの白状を遮ってまで言うべきことがなかったからだが、中里はその涼介の見せかけの従順さに満足し、突きつけていた指を胸元まで下ろすと、そうだ、と恐ろしいほどに似合わないとびきりの、自棄によるとすら見える笑顔となって、
「俺は、お前に」
乾いた、かすれた声で、ヤられたいんだ、と言った。
音が、衝撃が、顔面を突き破り脳に達し、そして頭の後ろから抜けていき、涼介は作るべき表情を思いつけず、精神を奪われた抜け殻のような状態のまま、それは、と芯の欠ける声を出した。
「異常だな」
うるせえ、笑顔を消し、歯を閉じたままながらも唾を吐きかねない勢いで中里は言った。涼介はポケットにしまっていた内側だけ熱くなっている右手を出し、冷たい空気にさらしながら髪を掻き、落ち着かないように目を泳がせている中里を見、頷いた。
「しかし、いい話だ。利害一致、双方向で完結している」
「そうか、そりゃ良かったな」
投げ捨てるような中里の言に、良かったよ、と心底からの思いをこめて涼介は返した。こんなことは初めてだ。
中里はそこでようやく何かに気付いたように、警戒を解いた表情で涼介を見た。
「利害、一致?」
「害が一致するかは疑問かもしれないが」
「どういうことだ」
「その通りの意味だ」
涼介は肩をすくめた。中里は意味を理解できないように眉をひそめ目を細め、そのまま真横へと顔を向けた。その先には走り屋の群れがあったが、中里がそれらへ注意を向けているのではなく、滞った思考を円滑にするためにそれらの雰囲気を取り入れようとしていることは、容易に推測できた。その中里の考えを見透かせるものだろうかと涼介はじっと眺めた。
だが中里の表情に変化はなく、観察の末にそれを発見した時には既にこちらへと不可解そうな顔が向けられ、一拍も置かず、「つまり」と考えを述べられていた。
「お前は、俺を、ヤりてえのか」
至極真剣な面持ちで、真剣な声音で、確かめるように中里は言った。不安よりも驚き、驚きよりも疑心、疑心よりも不可思議さがあるようだった。涼介は中里を見たまま、傍に置いた車の黒い体に右手を手を滑らせた。
「お前の家に行ってもいいか」
尋ねると、中里は重々しい顔のまま、「何でそういう話になる」、と重々しく聞き返し、涼介は常通りの冷静さをもって、答えになってないか、と更に聞き返した。声もなく時間だけが経過した。中里はゆっくりと目を閉じ、きつく舌打ちして、額から髪の生え際へかけてを強く掻き、最後に一つ大きく引き下ろすように掻いてしまうと、怒鳴るでも呟くでもない半端な声量と勢いで、だから、と言った。
「俺は、てめえの方が遠回しだっつったんだ」
「朝日が昇る前には終わらせるさ。俺はそう早くもないが遅くもない」
中里の改めての指摘をしかと聞きながらも、涼介は会話の上では無視をした。天を仰いだ中里は、がくりと俯き、力尽きたようにその場に座り込んだ。
「俺の家の周りに、ベンツを停められるような駐車場はねえんだよ」
「カバーは掛ける」
中里は背中を丸めて深く溜め息を吐いた。本気かよ、独り言のような切迫したその呟きは、立っている涼介の耳にも届いていた。だが涼介はそれ以上に働きかけることをしなかった。結論は既に出ており、あとは結果を出すまでにいくかであって、そしてそれは個々人が決めることであった。
悩める中里が受諾の決心をし立ち上がるまで、その黒く光る髪を見下ろしながら涼介はしかし、車に置いた右手でその髪を掴み上げ、眼前で選択を迫ることを想像していたのだった。
トップへ 露見 < 1 2 3